Clean Energy & Bifurcation

本研究室では、クリーンエネルギー×パワーエレクトロニクスをキーワードに研究を行なっています。学術的な観点からは回路理論の発展、新回路方式および制御方式の提案等に力を入れ、産業応用の観点からは、クリーンエネルギーを用いた発電を普及させることを視野に入れ、大学および企業関係者と分野横断的に連携し、ものづくりに携わっています。以下、研究内容を簡単に紹介します。

解析

Fig. 1. A conceptual diagram showing the evolution of the orbits in the power conversion circuit.

研究内容

電力変換回路の多くは、回路に含まれるスイッチングデバイスの切り替え動作に応じて、複数のサブシステムが切り替わる断続動作特性を有しています。スイッチング動作に伴う非線形性や回路パラメータの変化に応じ、電力変換回路には電流や電圧波形の振る舞いが定性的に変化する分岐現象が生じることが知られています。電力変換回路に生じる分岐現象を解析することは、学術的な観点からは回路理論の発展に直結し、工学的応用の観点からは回路設計にフィードバックされます。

図は電力変換回路の解軌道の概念図です。灰色の解軌道は1周期軌道であり、黒色の解軌道は固定点近傍に初期値を有する解軌道です。それぞれの解軌道はポアンカレ断面を出発後にスイッチング断面へ到達し、サブシステムの切り替わりを経て再びポアンカレ断面に戻ってきます。この過程において、初期値に与えられた摂動が、スイッチング動作を経てポアンカレ断面に再び戻ってくるまでの間にどの程度発達したのかを計算することが、回路動作の安定性解析の基本的な概念です。

近年、クリーンエネルギー発電デバイスを電源とする電力変換回路、小型化・高効率化を見据えてソフトスイッチングを導入した共振型電力変換回路など、新たな構成の回路の開発が進められています。これに伴い、既存手法を新回路に適用可能な形に改善し、理論の正当性を確認するとともに新回路が持つ定性的性質を解明し、回路理論の発展および回路設計にフィードバックすることが重要です。

一方、電力変換回路に生じる分岐現象の解析は、1980年代より精力的に研究が進められており、既存の電力変換回路に生じる分岐現象は解析され尽くされたと言っても過言ではありません。それ故に、複雑なスイッチングルールを有する回路や回路方程式が高次元で記述される回路など、煩雑な回路に生じる非線形現象の解析が当該分野の残された課題となっています。ここ数年間で、MATLABやPythonなど、強力なODE解析ツールを備えた計算ツールが普及しているとはいえ、近年の電力変換回路に生じる分岐現象の解析は、初学者が扱うには複雑であり、残念ながら、本研究テーマに携わる研究者も少なくなりつつあります。本研究室は、電力変換回路に生じる非線形現象の解析を専門に取り組む国内でも数少ない研究室といえます。

本研究室は、学術的および応用的な両観点から電力変換回路に生じる非線形現象を解析し、当該研究分野の発展と次世代の若手研究者ならびに問題解決能力を有する技術者の育成に貢献したいと考えています。

必要とされるスキル(ゼミ配属生向け)

プログラミング(C・MATLAB・Pythonなど)
数学を苦にしない方

実験

Fig. 1. A power conversion circuit for tracking the maximum power point of thermoelectric modules and supplying it to a battery.

Fig. 2. A power conversion circuit for driving a microcomputer installed on a ship engine.

研究内容

電力変換回路の設計開発を行なっています。図に示す回路は、クリーンエネルギー発電デバイスの一種である「熱電池」へ接続するための電力変換回路の一例です。本研究室は産学連携した取組に積極的に参画しており、用途に応じた回路設計開発に携わっています。電力変換回路の実使用環境化においては、ノイズ・振動・温度変化・信号伝達遅れ・誤動作など、設置環境に依存した想定外の回路動作が生じます。これらの予期せぬ回路動作を数値シミュレーション(分岐解析等)へフィードバックすることで、より現実に即した解析が実現でき、回路理論の発展と詳細な回路設計へとつながっていきます。

必要とされるスキル(ゼミ配属生向け)

電気回路・回路設計に関する知識
粘り強く取り組む姿勢

応用

注)動画の画質が悪い場合は,設定より高画質へ変更してください.

研究内容

開発した電力変換回路を用いて、実使用環境における動作確認と性能評価を行なっています。本動画は、船舶エンジンの排気ガスと海水の温度差から電気を発電し、エンジン温度や海水温度など所望の温度をセンシングし、Bluetooth通信によってユーザーにリアルタイムでデータを提供する無線通信システムの開発成果の検証の様子です(詳細は論文執筆中につき公開できずすみません)。本研究は機械システム工学科 近藤千尋先生との共同実施テーマです。2024年8月 ボートとエンジンを購入し、試運転とデータ取得を兼ねて大分から岡山まで航海した際の動画になります。今後、実験に関わる内容も可能な範囲で公開予定です。

その他、太陽電池の発電実験、大型水冷式エンジンの排熱回収・バッテリー給電試験など、いろいろやっています。

必要とされるスキル(ゼミ配属生向け)

プログラミング(C・Python・Matlabなど)
電気回路、回路設計に関する知識
やる気と体力

研究開発ストラテジー

  • 情報収集

    論文調査や国内外の学会参加によって情報を収集し、今後需要が見込まれる回路にターゲットに絞ります。

  • 回路の定性的性質の調査

    広いパラメータ空間で動作解析し、数学的観点から回路の定性的性質を解明します。

  • 回路実験

    回路実験を行い、数学的観点から明らかにした回路の定性的性質を検証します。

  • 論文執筆

    新たな結果の得られ、理論・実験の両面から正当性が確認できた場合、データをまとめて論文を執筆します。

  • 応用展開

    実使用環境にて開発回路の動作確認と評価を行い、得られた問題点を数値シミュレーションにフィードバックします。